舌乳頭腫症例-主とし♦て Bleomycin 使用後の乳頭腫上皮の電顕的所見について
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概要
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舌乳頭腫は時に悪性化の像を示すことがあり, 本邦の報告症例中40才台以上では約31%に病理組織学的に悪性化乃至はその疑いを認めた. 成因についても確説はまだなく, 外因として慢性刺戟の外に, Virus による感染などもあげられており興味ある点が少なくない治療は手術的除去が第一であるが, 著者らは手術を忌避した74才男子の拇指大の舌乳頭腫症例に, 梅沢らの発見による抗腫瘍性抗生物質である Bleomycin を計300mg筋注使用し, 臨床経過を観察する機会をもつた. そして約1年3ヶ月にわたつて, Bleomycin 使用による組織学的所見の推移を適宜観察し, 又電顕的に Bleomycin 使用前後の乳頭腫上皮の微細構造の変化を観察して次の如き結果を得たので報告した.1) 舌乳頭腫は Bleomycin 使用中は若干縮小したが, 使用中止後7ヶ月半では再び以前ほどではないが腫瘍が若干増大した. 副作用として軽度の食欲不振, 排尿痛などが認められた.2) 光顕所晃では Bleomycin 300mg 使用後, 細胞の Degeneration が顕著となり, 使用中比後2ヶ月半でも細胞の Degeneraion や, Spineformation の不明瞭な部が認められたが, 使用中止後7ヶ月半では Bleomycin 使用前と略同様に Differentiation もよくなつており, 細胞の Degeneration も軽度となつていた.3) 電顕所見では Bleomycin 300mg 使用後, 一部基底細胞の核周辺の不明瞭化, 細胞質中の densebody の出現と, 一部有棘細胞での dense-body の増加, 核の陥入化, 細胞質内の空胞化, 一部核質の粗造化などが認められた. Virus particles や viral inclusion などは認められなかつた.
- 社団法人 日本耳鼻咽喉科学会の論文