泰国地質鉱産略編 その 1 : 層序小説
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
この国の先寒武界 (Precambrian) は層序・岩相などからの推定によるもので, 絶対年代の決定によるものはまだない。角閃岩相の片麻岩類がこの時代のものであろうとされ, この国西縁の山岳部の中軸帯にみられる他, シャム湾北縁東側にみられる。<BR>下部古生界 (Lower Palaeozoic) のものは西縁山岳地帯, シャム湾北縁東側, および南の半島部にしられる。寒武紀 (Cambrian) のものは三葉虫を伴う砂岩よりなり, また珪岩, 石英千枚岩, 石英片岩, 若干の泥質岩よりなる地域もある。奥陶紀 (Ordovician) のものは, よく成層する石灰岩よりなるものが典型的で, 頭足類の化石を伴うことがあり, また頁岩, 砂質岩類を若干挾在する。<BR>中部古生界は変化にとみ, 西部では三葉虫, 筆石, 触角石 (tentaculites) を含む頁岩があり, 中部では触角石頁岩, 砂岩, 石灰岩, チャート, 東部では火山岩を伴う優地向斜相 (eugeosynclinal facies) を示す。<BR>中部古生界の上部のものは処により石炭系 (Carboniferous) または二畳系 (Permian) にひきつづくが, 中央部ではこの時期のものは化石をみない赤色岩層により代表される。<BR>上部古生界のものはこれより古いものをおおうかこれに伴って存し, 石炭紀のものは化石にとむ頁岩や砂岩で二畳紀層の下にくる。所により石炭紀の化石のみられぬ赤色岩層が二畳紀層下に整合または不整合に存する。上部古生層の上位のものは主として石灰岩であるが, この石灰岩は所によりちがった時期から始まる。化石をふくむ三畳紀層 (Triassic) は, 国の西部にみられ, 所により二畳-三畳紀の境は整合または不整合となる。<BR>三畳紀後期-白亜紀 (Cretaceous) の非海成層は主として北東部にみられ, Norian または Carnian 後期からも始まったとされる。この地層は志留-泥盆紀 (Silurian-Devonian) から三畳紀におよぶ時代の古期岩層の上にのり, 時には後期三畳紀の火山岩類をおおうこともある。<BR>第三紀層 (Tertiary) は山間盆地, チャオフラヤ河の中央平原, シャム湾底にしられ, 褐炭や含油頁岩 (oil shale) を含むことが多い。その時代決定は未だ十分でない。<BR>この国の層序がここ十数年来の日本人古生物専門家他の多大の貢献によって急激に明らかとなってきたことは著しく, また新旧各種の地層にはいろいろの地層名がっけられてきているものの, この国の層序分類はまだ確立するには程遠く, 既に混乱が生じてきている。基礎的な精細にして確実な成果をあげる正直な現地調査が更につみ重ねられていかねばならず, そのためにはこの国の国民ひいては世界の全人類が自然との調和において幸せに暮してゆける為に献身するこの国の地質専門家が, 多数近い将来に現れることこそ望ましい。