三浦半島, 宮田累層産軟体動物化石群集について
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概要
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上で述べたことを次に要約する。<BR>(1) 宮田累層産軟体動物化石群は一般に親潮系冷水種を高い割合で含み, 相模湾沿岸に分布する中部洪積統の中では特異な存在である。古生物学的特徴からは宮田累層を二宮層, 長沼層と対比することは困難である。<BR>(2) 宮田累層の堆積環境は, 堆積期の中期にはかなり潮通しが良く, 主として砂底に生息する軟体動物の生息に適していたが, 末期にはやや内湾的で泥底に生息する軟体動物に適した環境に移行した。<BR>(3) 宮田累層の軟体動物化石群には上浅海帯で形成されたものと, 亜浅海帯や下浅海帯で形成されたものとがある。後者に属するものは上部浅海帯からの落ちこみによって生じたいわゆる混合群集である。<BR>(4) 宮田累層産の親潮系冷水種は主として上浅海帯のような浅海底の生息種である。亜浅海帯や下浅海帯に生息できるものは黒潮系暖水種である。しかし, 浅海底に生息していた黒潮型暖水種も少なくない。このことから富田累層堆積の場は主として暖流の支配下にあったが, 浅海帯はかなり長期に亘って寒流の影響を強く受ける環境であった.