岩手県雫石盆地の特殊な円錐状構造をもつた化石標本について
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概要
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岩手県雫石盆地に発達する新第三系の層位学的ならびに堆積学的研究を行なつておる途上, 岩手ポゾラン採石現場付近に発達する中新世上部の桝沢層上部から円錐形構造をもつたコンクリーション様のものを入手することができた。これは当時の堆積環境を知るうえに重要な手がかりになるものではなかろうかと考えて研究し, 次のような結果を得たのでこれを報告する。<BR>この円錐形構造をもつたものは湖成堆積物と考えられている桝沢層から発見されたが, これとよく形体が類似したクリンドリクヌスは海成堆積物から発見されている。<BR>この円錐形構造をもつたものはさや状の外壁と内部とからなつており, さや状の外壁は褐鉄鉱よりなり, 環状のふくらみをもつている以外は何も認められないし, 内部は硅藻質細粒凝灰岩からできており, セプタ状の下にくぼんだラミナが発達し, 褐鉄鉱のシミがついている。<BR>これにやや類似したものにディプロクラテリオンやリゾコラリウムがあるが, 内部構造, 外壁の形態, 軸の方向, 大きさ等にそれぞれ相異がみとめられ, 同一視することはできない。今までの文献にはこれと同一と考えられるものは著者の知るかぎりではみあたらないが, 不完全な標本なので命名を控えておく。<BR>生成環境は植物化石や淡水硅藻化石から湖成層であり, 現在と同じ高度であつたなら今より寒冷であつたと考えられる。その生成の水深度については決定する資料を持たないが, 桝沢層の上部から発見されている。<BR>成因については, 非常に困難ではあるが, 桝沢層の上部に発見される植物化石や亜炭砕屑物をもたらした樹木の幹・枝の内部が朽ちて, その後に堆積物が充填され, その外壁となる樹皮があとで褐鉄鉱によつて置換されたものと考えられるが, まだ確定的ではない。
- 社団法人 東京地学協会の論文