水腎症を呈したS状結腸―直腸間膜脂肪織炎の1例
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概要
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腸間膜脂肪織炎は腸間膜に発生する稀な非特異性炎症で,本邦では文献上本例を含め50例が報告されているに過ぎない。われわれは卵巣嚢腫摘出後に発生し,右水腎症を伴ったS状結腸〜直月腸間膜脂肪織炎の1例を経験したので報告する,症例は54歳女性で昭和63年10月に右卵巣嚢腫(2,680g)の摘出手術を受けており組織学的に悪性像は認あられていない.平成2年3月より腹部膨満感出現し,近医にて注腸造影検査にてS状結腸から直腸上部の狭窄を指摘されたものである.入院後保存的治療に反応せず,右水腎症を認めたため,平成2年4月9日に低位前方切除および右尿管遊離を行った.病理組織所見では悪性像を認めず,脂肪織の変性と線維化を主体とする非特異性炎の像を呈しており,脂肪織炎と診断した.術後経過は良好で第35病日に退院し,現在まで3年間健在で,後腹膜および腸間膜に再燃を認めていない.