低位筋間痔瘻に対する括約筋温存術式 : 全瘻管くり抜き内方閉鎖術式
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概要
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1965年,Parks,Goligher等を代表とする括約筋温存術式がわが国に導入され,当初はその模倣であったが,その後,同術式に内括約筋欠損という欠点があることから,改良を加えた種々の術式を試み,本誌にて発表を行ってきた.その概略を述べると,全瘻管くり抜き+内括約筋切除(Parks術式)→全瘻管くり抜き+原発口部sliding skin graft術式→内方・中間(primary abscess)・外方からの3分割くり抜き術式→全瘻管くり抜き+内方創の結紮切除半閉鎖法に準じた閉鎖,等の変遷を経た.ただし過去3年間にわたっては,<BR>1.外方および内方よりスタートし,primary abscessで合致する侵襲を最少限に留めた全瘻管くり抜き<BR>2.内方創に対する結紮切除法に準じたdrainage創形成<BR>3.その側方の副病変切除<BR>4.内方の内括約筋欠損に対する周囲への緊張を除いた後の縫合閉鎖,の4操作を加味した術式を行って<BR>いる.この術式の特徴は,全瘻管が切除されているということ,内口部および外口部のdrainage創がそれぞれ内・外に向かって効いているということ,瘻管くり抜き創の内方口が緊張なく閉鎖されているということであると思われる.その成績は過去3年間においてさしたる合併症もなく,平均治癒日数27日,再発98例中2例(2.0%)と,かなり良好な成績を得ている.この術式の欠点としては,操作がやや繁雑であるという点の他は,内方括約筋閉鎖に多少手がかかる位のものである.今後さらに諸家と切磋琢磨して,術式の改良に努めるべきであると思うが,種々行なわれている低位筋間痔瘻に対する括約筋温存術式の1つの完成された形としての価値はあると考え,ここに発表する.