乳仔期三環系抗うつ薬投与によるラット体温調節系機能発達の変化とその性差
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概要
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三環系抗うつ薬のimipramine(IMI),desipramine(DMI)各々5mg/kg,対照としてsalineを,Wistar-今道系乳仔ラット雌雄に7〜19日齢の間1日1回皮下投与し,体温調節系の機能発達に及ぼす長期的影響を,基礎体温(直腸温)およびthyrotropin-releasing hormone (TRH) 10mg/kg腹腔内投与後の体温反応を指標に検討した.抗うつ薬持続投与中の17日齢では,IMIまたはDMI各々5mg/kg皮下投与後90分間の体温変動をsaline投与群と比較すると,IMI投与群では有意な体温下降を示したが,DMI投与群では変化が認められなかった.IMI群雌のみが,思春期発来後の7,8,12週齢で基礎体温の高値を示した.TRHによる体温反応は,5週齢(前思春期)では,15,30分後に,IMI群雌およびsaline群雌では上昇を示したが,DMI群雌は30分で一時的な下降を示した.9週齢(成熟期)では,IMI群雄の体温上昇が,15,30分にて対照群と比べ有意に大であった.IMI群雌およびDMI群雌雄では,有意差は認められなかった.IMI群雄とsaline群雄を9週齢にて去勢群,シャム手術群,非手術群に分け,11週齢にてTRH体温反応を検索した.両去勢群は,シャム手術群および非手術群と比べ体温上昇度が減少し,IMI去勢群では有意であった.11週齢にて去勢群に対してtestosterone enanthate 20mg/kgを1回皮下投与し,13週齢にて再度TRH体温反応を検索した結果,testosteroneを補充された両去勢群は,シャム手術群および非手術群と同程度の体温上昇度に回復した.本結果より,乳仔ラットにimipramineを反復投与すると,思春期以降において体温調節系の機能変化が顕性化するが,その変化には性差が認められ,性ホルモンの関与の可能性が示唆された.