ラット脳コリン作動性神経に対する Ethylcholine mustard aziridinium ion(AF64A)腹腔内投与の効果
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概要
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コリン作動性神経毒である ethylcholine mustard aziridinium ion(AF64A)を,腹腔内注射にてラットに投与し,脳コリン作動性神経に対する効果について検討した.up and down 法にて求めたAF64Aの LD50 は 291 μmol/kgであった.高用量の AF64A 投与はラットに一過性の運動性低下,うずくまり,呼吸困難を起こした.また,投与日に見られた飲水と摂食の顕著な減退,体重減少は日を追って軽減した.AF64A 129 μmol/kgの単回投与24時間後,大脳皮質,海馬,線条体の acetylcholine(ACh)含量は有意に減少し,さらに投与後10日目でもなお大脳皮質の ACh 含量は低下したままであった・初日129 μmol/kg,以降12.9 μmol/kg/dayで1日1回10日間 AF64A を連続投与すると,大脳皮質と海馬のACh 含量は投与後少なくとも20日間減少したままであった.初日 86 μmol/kg,以降 12.9 μmol/kg/dayで10日間 AF64A を連続投与し,最終投与後1日目あるいは14〜20日目に作製した大脳皮質切片からの電気刺激によるACh放出は非常に減少し,23.4mM KCl 脱分極刺激による ACh 放出もかなりの程度減少した.これらの放出減少は細胞外液への外因性 choline(1×10<SUP>-5</SUP>M)添加によっても軽減しなかった・T字迷路における自発性進入岐路交替行動(“spontaneous alternation behavior”)は,生理食塩水投与群では100%のラットに見られたが,AF64A 10日間連続投与群では60%のラットにしか見られなかった.投与後14〜20日経過しても交替率は依然として低下したままであった.このラットの自発性進入岐路交替行動は中枢コリン作動性神経が関与する行動であると提唱されており,AF64A 投与群の低い交替率は AF64A による中枢コリン作動性神経伝達抑制を反映していると考えられる.以上の実験結果から,AF64A の腹腔内投与は脳内 ACh 含量をあまり大きく減少させないが,ACh 放出を阻害して,持続性の中枢コリン作動性神経伝達障害を起こし得ると指摘できる.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
著者
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森尾 保徳
大阪府立大学農学部家畜薬理学教室
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矢ヶ崎 修
大阪府立大学農学部家畜薬理学教室
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西尾 英明
大阪府立大学
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野田 有宏
大阪府立大学農学部家畜薬理学教室
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西尾 英明
大阪府立大学農学部家畜薬理学教室
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