麻酔犬の心血管系に対する PGI<SUB>2</SUB> 誘導体,Beraprost sodium(TRK-100)の作用
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
麻酔犬において prostacyclin(PGI<SUB>2</SUB>)誘導体,beraprost sodium(TRK-100)の血管および心臓に対する作用を検討した結果,動脈内投与では,椎骨動脈,冠動脈,肝動脈,脾動脈,腎動脈,腸間膜動脈,大腿動脈を 0.003〜3,000μg/血管床の用量範囲で用量依存的に拡張させた.腸間膜動脈および脾動脈の血管を他の臓器よりやや低用量(0.03μg/血管床)から拡張させたが,特に強い血管選択性は見られなかった.静脈内投与では頸動脈および腸間膜動脈血流を増加させ,それぞれ最大増加は TRK-100(2.5μg/kg)で 28.9% および 93%,PGI<SUB>2</SUB>(1.25μg/kg)で2 9.9% および 79% であった.腎動脈血流についてはそれぞれ最大増加は 18.4% および 35% であった.一方,椎骨動脈および大腿動脈血流は両薬物(0.078〜2.5μg/kg)の静脈内投与で減少した.この減少は拡張反応閾値の低い動脈の血管拡張による影響であると考えられる.血圧に対しては TRK-100 および PGI<SUB>2</SUB> はそれぞれ 0.078 および 0.156μg/kg以上の静脈内投与で用量依存的な降下を引き起こした.心拍数に対しては両者ともやや増加させ,最大反応は TRK-100(2.5μg/kg)で投与前値の 10.5%,PGI<SUB>2</SUB>(1.25μg/kg)で17.0% 増加であった.この作用は血圧低下の影響による反射と思われる.心機能に対する作用については,PGI<SUB>2</SUB> および TRK-100 は 0.3μg/kg以上の静脈内投与で左心内圧およびその上昇速度を抑制し,30μg/kgでは投与前の約47%に低下した.心拍出量に対する最大抑制は24%程度の弱い抑制であった.冠血流量に対して PGI<SUB>2</SUB> は 0.3μg/kgから,TRK-100 は 30μg/kg から有意な低下作用を示し,3 および 100μg/kgではそれぞれ41%および33%低下させた.心仕事量についてはそれぞれ 0.1 および 1μg/kgから抑制した.酸素消費量は PGI<SUB>2</SUB> で 3μg/kg,TRK-100 で 30μg/kg から有意な低下が見られた.総末梢抵抗はそれぞれ3μg/kg から低下し,30μg/kgでほぼ最大となり約50%の低下がみられた.以上の結果から TRK-100は PGI<SUB>2</SUB> と同様に強い末梢抵抗血管拡張作用を持ち,直接的な心抑制作用はないものと思われる.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
著者
-
遠藤 孝
東レ(株)基礎研究所
-
西尾 伸太郎
東レ株式会社 医薬研究所
-
西尾 伸太郎
東レ(株)基礎研究所
-
松浦 博敏
東レ(株)基礎研究所
-
服部 雅一
東レ(株)基礎研究所
-
山田 尚弘
東レ(株)基礎研究所
-
平野 哲也
東レ(株)基礎研究所
-
村井 健
科研製薬(株)中央研究所
-
宮尾 佳伸
科研製薬(株)中央研究所
-
叶井 友子
科研製薬(株)中央研究所
-
梅津 照彦
科研製薬(株)中央研究所
関連論文
- 経口投与可能なPGI_2誘導体ベラプロストナトリウムの薬理作用と臨床効果
- 安定PGI_2誘導体ベラプロストナトリウムの開発
- Deltorphin (opioid δ-agonist) が Guinea pig 摘出灌流心臓に及ぼす影響
- 麻酔犬の心血管系に対する PGI2 誘導体,Beraprost sodium(TRK-100)の作用
- ヒト塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)製剤
- フィブラスト