心室筋の頻度―収縮関係の変動より見た変力作用イオン機構の解析
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概要
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頻度-収縮関係から変力作用物質わけても強心薬の作用発現に関与するイオンを推定するため,モルモット摘出心室筋の頻度-収縮関係(FFR)の変動因子の解析を種hの作用機序が解明されている薬物を用いて検討した.このFFR曲線は細胞外液中のCa<SUP>2+</SUP>濃度の上昇及びNa<SUP>+</SUP>濃度の減少により上方へ平行移動し,〔Ca<SUP>2+</SUP>〕<SUB>o</SUB>/〔Na<SUP>+</SUP>〕<SUB>o</SUB><SUP>2</SUP>が一定の条件下では移動しなかった.Na<SUP>+</SUP>流入を増加する薬物veratridine及びasebotoxin-IIIは中頻度で陽性変力作用(PIE)を示し,FFR曲線を左方へ平行移動させた.一方Naチャンネルを遮断するtetrodotoxinは高頻度で陰性変力作用(NIE)を示しFFR曲線を下方へ移動させた.Na<SUP>+</SUP>,K<SUP>+</SUP>-ATPase阻害剤ouabainの高濃度は全ての頻度でPIEを示し,FFR曲線を上方へ移動させた.心筋内c-AMPを増加させる3-isobutyl-1-methylYanthine及びhistamineはほぼ全ての頻度でPIEを示しFFR曲線を上方へ移動させた.Caチャンネルブロッカー,nifedipine及びverapamilはほぼ全ての頻度でNIEを示しFFR曲線を下方へ移動させた.verapamilは特に高頻度で強いNIEを示した.一方Caチャンネルアゴニスト,BAYK8644では全ての頻度でPIEを示したが,特に中頻度で明確にみられ,FFR曲線を左方へ移動させた.以上の様に種々の薬物は刺激頻度に依存して変力作用を示しFFR曲線を移動させた.この移動はいくつかのパターンに分類できた.特にNa<SUP>+</SUP>及びCa<SUP>2+</SUP>に依存する収縮変化は極く低頻度のRSCでの収縮波形の特徴から分類することが可能となった.頻度-収縮関係の変化パターンから逆に変力作用を有する未知物質の作用機序の方向を推定する時に利用可能と考える.
- 社団法人 日本薬理学会の論文