Tolueneのマウスにおける体内分布,代謝および排泄に関する研究
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概要
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<SUP>14</SUP>C-標識toluene(290μg/kg)を雄マウスの腹腔内に投与し,tolueneの体内分布・代謝および排泄を検討し,以下の知見を得た.1)血液中の放射能は指数関数的に低下し,その生物学的半減期は25分と算出された.2)組織中で最も高い放射能がみとめられたのは脂肪組織,ついで腎・肝・肺の順であり,脳は最も低かった.脳と血液との濃度比は約0.4にすぎなかった.3)投与後8分の時点で,すでに肝・腎に存在する放射能のおのおの64%・78%が不揮発性代謝物に由来するもので,この割合は時間の経過とともにきらに増加していった.これに反して脳では揮発性物質(おそらく未変化のtoluene)が放射能の70%を占め,また脂肪組織では99%以上であり,この割合は両組織とも時間が経過してもほとんど変りなかった.4)尿中へ排泄された放射能は30分で投与量の26.4%に相当し,3時間30分で50%にも達した.呼気中へは投与直後30分間で4.3%が排泄きれるにすぎず,以後はほとんど排泄されなかった.一方糞便中への排泄は18時間後においても1.3%にすぎなかった.6)尿中へ排泄された放射性物質はその59%がhippuric acidで41%はbenzoylglucuronic acidであることがchromatographyで確かめられた,肝と腎よりmethanolで抽出される放射性物質は,未同定物質を含めhipuric acidとbenzoylglucuronic acidの三つよりなるが,benzoic acidは検出されなかった.以上の結果から,1)tolueneの代謝は極めて速やかでその代謝物の排泄は主に尿を介する,2)従来報告されているヒトやウサギの結果とは異なり,マウスにおいてはtolueneの代謝機構としてグルクロン酸抱合の占める割合が大きい,3)一旦脳内に侵入したtolueneは代謝を受けることはほとんどなく,血中濃度の低下にやや遅れて消失する,などのことが結論される.