マウス培養歯胚の石灰化に対するChlorpromazineの効果:Retinoic acidおよびHEBPとの比較
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概要
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歯胚の器官培養を用いて,chlorpromazineの石灰化に対する効果を,retinoic acidおよび1-hydroxyethylidene-1,1-bisphosphonate(HEBP)の効果と比較検討した.石灰化を評価するため,歯胚のアルカリホスファターゼ(ALP)活性およびカルシウム量の測定と組織学的検索を行った.胎生17日目のddY系マウスより摘出した下顎第一臼歯歯胚を,2,3,7,10および12日間培養した.培養歯胚のALP活性およびカルシウム量は共に培養日数に依存して増加したが,ALP活性の増加はカルシウム量の増加に先行していた.retinoic acid(1μM)を処理した歯胚において,ALP活性は培養7日目において,カルシウム量は培養10日目で有意に減少した.しかし,このretinoic acidの抑制効果は摘出後2日間の培養により成熟させた歯胚においては認あられなかった.HEBP(0.1mM)は培養7日目において歯胚のカルシウム量を有意に減少させたが,ALP活性に対しては著明な増加を示した.chlorpromazine(1μM)は明らかな石灰化抑制を示し,歯胚のALP活性およびカルシウム量を共に培養7日目において著明に減少させた.また,選択性の高いcalmodulin阻害薬であるW-7およびその誘導体であるW-5もchlorpromazineと同様に,歯胚のALP活性およびカルシウム量を減少させた.W-7はW-5よりも強力な作用を示した.また,chlorpromazineおよびHEBPの効果は,摘出後2日間の培養により成熟させた歯胚においても認められた.これらの結果より,chlorpromazineが歯胚の石灰化に対し抑制効果を有している事,この作用様式がretinoicacidおよびHEBPとは異なっている事,さらに歯胚の石灰化にcalmodulin系の機構が介在している可能性を示した.
- 社団法人 日本薬理学会の論文