諸種モノアミン関連薬物のウサギ睡眠―覚醒周期におよぼす影響
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概要
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睡眠―覚醒周期,特に逆説睡眠(PS)発現機構に対する脳内モノアミンの役割について検討した.実験にはウサギを用い,脳内モノアミン量の変動ないしその活性に影響を与える薬物として,reserpine,parachlorophenylalanine(PCPA),α-methyl-p-tyrosine(α-MT)およびα-methyl-m-tyrosine(α-MMT)を用いた.reserpine(0.5mg/kg,i.v.)は投与後2〜3時間持続する覚醒相と,それに次ぐ徐波睡眠優位な時期とからなる二相性の変化を来たし,PS発現を少なくとも8〜9時間抑制した.しかしreserpine投与40〜60分頃より台形体内側核からネコのPGO(ponto-geniculo-occipital)波に類似のスパイク波が出現し,8〜12時間にわたって意識水準にほとんど関係なく持続的に出現した.このスパイク波(xeserpineスパイク)は同部位よりPS時に出現するスパイク波(TRスパイク)と波形その他の電気生理学的諸性質が酷似しており,両者が互いに共通の発現機序に基いて出現している可能性が示唆された.reserpineスパイクの振幅,発射頻度および群発性が著しく増大する場合のポリグラフィーは,動物が行動的に覚醒している点を除けば,PS時のものとほとんど区別出来なかった.PCPA(250mg/kg,1日2回,3日間連続腹腔内)投与例では徐波睡眠相に移行するとTRスパイクが持続的に出現するようになり,その振幅ならびに発射頻度が次第に増大する場合にはPSへ移行するケースが多くみられた.PCPA前処置ウサギではreserpineスパイクの出現潜時が著しく短縮され,しかも覚醒時においても出現するようになった.α-MT(200mg/kg,i.p.)は単独ではPS時以外の時期にTRスパイクを出現せしめることはなかった.α-MMTは,徐波睡眠に著変を来たさない用量(100mg/kg,i.v.)でPS発現を著明に抑制した.これらの事実は,程度の差はあるが,NAも5HTと同様,下位脳幹部におけるPS発現の“triggering mechanism”に対して抑制的な作用を有していることを示唆している.
- 社団法人 日本薬理学会の論文