フザリン酸とその誘導体の心血管系に対する作用
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概要
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Dopamine-β-hydroxylase (DBH) の特異的阻害剤であるフザリン酸とその誘導体であり, DBH阻害作用がより強い5-(4-chlorobutyl) picolinic acid (FD-008) を心血管系に対する全身作用と直接作用とについてペントバルビタール麻酔犬を用いて比較検討した.フザリン酸 (10〜30mg/kg) の静注では急速かつ用量に応じた降圧に伴い,心拍数増加,呼吸促進,上腸間膜動脈血流量の著明な増加,大腿動脈血流量の減少が観察された. FD-008もほとんど同様の作用を示した.単離した洞房結節交叉環流標本,及び乳頭筋交叉環流標本ではフザリン酸 (0.3〜3mg) の近接動注により用量に応じた洞調律の減少及び収縮張力の減少が各々認められた.また上腸間膜,腎臓及び大腿動脈の血液環流標本に対してフザリン酸 (10〜30mg) の近接動注は用量に応じて血流量を増加させた.これら末梢臓器に対する直接作用はFD-008投与でも全く同様に観察されたが,フザリン酸ほどその最大反応は強くなかった.これらのことから両薬物の静注により起こる急速な降圧は, DBH阻害によるのではなく,心臓に対する直接的な抑制作用と末梢臓器血管,とくに内臓血管に対する直接的な抵抗減少作用とによると考えられる.
- 社団法人 日本薬理学会の論文