ラット脳内の5-Hydroxytryptamine neuronの分布とThiopental sodium投与後の変化に関する蛍光組織化学的研究
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概要
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ラット脳内における5-HT neuronの分布を知るためFalck and Hillarpの蛍光組織化学法を応用した.5-HT蛍光物質の同定にはLeitz顕微鏡蛍光分光光度計を用い,光源にはxenon lampをえらび,model実験および組織標本についての実験によって5-HT蛍光物質が励起波長420mμ,蛍光波長520mμにそれぞれpeakを示すことを確かめ,この波長特性をもつ蛍光neuronを5-HT neuronとした.Reserpine-nialamide前処置ラット脳の前頭断面ならびに矢状断面について,蛍光顕微鏡下に観察を行なった.脳を延髄,橋,中脳・間脳および終脳の5部に分かち,各部の前頭断面についてしらべると,DahlstromのいわゆるB1ないしB9細胞群の5-HT neuronは概ね正中矢状面の両側約200μの範囲内いわゆる縫線核に局在するのに対し,B3細胞群の多くのものおよびB9細胞群は縫線の両側にあって対称的に位置するのがみられた.この結果に基づき,正中矢状面から約50μ外側の断面について,これを約30箇所に区分し,各区分の蛍光写真撮影を行ない,これらを組合わせることによって同断面における5-HT neuronの分布写真を完成した.次にthiopental sodium80mg/kgの腹腔内投与後,脳各部の前頭断面において5-HT neuronの蛍光における変化をしらべると,対照例における5-HT neuronの微弱な蛍光はthiopental sodium投与後いずれも増強し,また蛍光によって認めうるneuron数も増加し,B7細胞群においてはその影響が最も著明に認められた,矢状断面でみるとnuc.suprachiasmaticusにおいても投与例においてはneuron終末に蛍光の増強がみられ,varicosityが明らかに認められるようになった.以上のように,脳内における5-HT neuronの分布を基礎として,thiopental sodium投与の影響をみると,投与後5-HT neuronに蛍光の増強が明らかに認められ,同neuronに5-HTが増量したことを示し,thiopentalの薬理作用が5-HT neuronを介して発現する可能性を示唆するものと思われる.