異項環状カルボン酸誘導体の血糖低下作用
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概要
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新合成異環状カルボン酸 (NDM) 誘導体の主として経口投与による血糖低下作用について検討し次のごとき結果をえた. 1) ブドウ糖負荷ラットにおいて, 3または5位にmethyl基,あるいはこれとともに5または3位にcarboxyl基, carboxylic acidおよびcarboxylic acid amideなどが導入された誘導体は強い血糖低下作用を有していた. 2) ウサギにおける耐糖力試験では, isoxazole系誘導体は軽度陰性, pyrazole系誘導体は軽度陽性傾向を示した. 3) マウスにおける低血糖試験では,ブドウ糖の投与によってNDM誘導体によるLD50や死亡までの時間は有意な変化をうけなかった. 4)ウサギにおけるハソピング試験では, isoxazole系, pyrazole系誘導体ともに陽性傾向を示した. 5) イヌとウサギの正常血糖値および膵臓摘出ラットの高血糖値は, NDM誘導体投与によってはほとんど影響をうけなかった. 6) ウサギの正常血糖値およびalloxan糖尿病ウサギの高血糖値は, NDM誘導体の投与によってはほとんど有意義な低下現象は認められなかった. 7) エピネフリン過血糖試験では, isoxazole系誘導体では陽性傾向, pyrazole系誘導体は陰性傾向を示した. 8) ラットにおいて, NDM誘導体は,肝臓glycogen量を低下させえなかったが,ブドウ糖投与による肝臓glycogen量の増加作用を抑制した. 9) ブドウ糖負荷副腎摘出ラットでは,同じブドウ糖負荷正常ラットにおけるとほぼ同じ比率で血糖低下作用をおこした. 10)ブドウ糖負荷ラットにおいて, tolbutamide, oxalacetic acidまたはinsulinとNDM誘導体の併用による血糖低下作用の協力増強効果は認められなかった. 11) ウサギの正常遊離脂肪酸量はNDM誘導体投与によって軽度の増加をおこしたり,またはわずかな減少をおこした. 12) ウサギにおいてブドウ糖投与時, NDM誘導体によって糖の尿中排泄量が著明に増加された. 以上の結果から,異項環状カルボン酸誘導体は,特に外因性ブドウ糖の著明な尿中排泄促進作用によって血糖値を低下させる作用を有すると考えられるが,内因性血糖上昇作用に対しては抑制効果は少ないものと考えれる.
- 社団法人 日本薬理学会の論文