なめし革の等電点とゼータ電位
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概要
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製革工程におけるなめし剤,塩類,染料などのイオン性物質に対する革への吸着•脱着現象を界面電気的立場から検討するために,数種のなめし革を試料として,流動電位法によりゼータ(ζ)電位を測定した.クロムなめし革の等電点はpH6.3〜6.9で,ミモサタンニン革はpH3.4であった.未鞣製皮の等電点(pH5.4)に比べてクロムなめし革の値はアルカリ性側に,ミモサタンユン革の値は酸性側に移動した.前者はコラーゲンの酸性カルボキシル基に,後者は塩基性アミノ基にそれぞれのなめし剤が結合するなめし機構を誉することが裏付けられた,グルコース還元クロム液によるなめし革では,粉末クロムなめし剤による革に比べて正のζ電位が高いことから,クロム液の主構成成分がカチオンクロム錯体からなるものと推定できた.コラーゲンの酸性カルボキシル基に結合したクロムにスルホン酸基を多く有するアニオン染料が染着すれば,革の正のζ電位は著しく低下することは明らかであった.ミモサタンニン革はタンニンの使用量が少ない時には正のζ電位を示し,多い時には負のζ電位に逆転した.これは,塩基性アミノ基に吸着するタンニン量が多くなるに従って,革の負電荷が増加してくるためと考えられた.熟成後の粉末クロム革は洗浄初期では負のζ電位を示し,洗浄が進むに従って正のζ電位に変化し,3回目の洗浄を過ぎると正のζ電位は平衡に達した.流動電位法により革のζ電位を測定することによって,洗浄工程の適正化の条件設定を可能とした.以上のことから,革の表面電位特性はコラーゲンの官能基の解離によるものが主原因であることは明らかであったが,その直接の要因は吸着した物質のイオンの種類,濃度によって決定づけられた.等電点を決定することは,革へのイオン性物質の吸脱着•浸透に対する最適条件を設定する手がかりを与えるものと考えられた.
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