オーステナイト-クロム-ニッケル不銹鋼の應力腐蝕割れの發生條件と機構竝びに其の防止法
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概要
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局部的割れの發生の結果オーステナイト-クロム-ニッケル鋼は使用中幾多の破損を生じた.使用條件中には繰返應力又は可變應力を含まず,又粒間腐蝕の傾向のある材料を必ずしも含んでゐなかつた.研究の結果によるとこの破損は内部的靜的應力の存在すると云ふ條件と應力の存在する材料が或種の腐蝕液に曝されてゐたことに原因してゐることが判つた.この腐蝕液は時としては炭素鋼を侵さない程度の弱いものでも破損が發生した.破損は應力腐蝕型であり或種の眞鍮の自然割れ及び罐板のアルカリ脆性の如く他の金屬に於ては稀に起る應力腐蝕割れに似てゐることが判つた.オーステナイト-クロム-ニッケル不銹鋼の斯かる腐蝕割れは粒間破損又は粒貫破損となつて現れることが斷定された.應力の大きさ・腐蝕液の強さ及び材料の粒間腐蝕の傾向の大小等の因子によつて破損の經路が決定される.チタン及びコロンピウムの如き安定劑は粒貫應力腐蝕割れを防止するのに無效であることが判明した.然しこのために粒間腐蝕の感受性は消失し,このものに應力腐蝕割れを發生せしむるためには更に高い應力な必要とした.應力腐蝕破損の可能性な除去するためには加工應力を高温處理によつて除去又は減少せしめる必要がある.尚又熱應力な除くためには材料を緩徐冷却せしむるが要する.18-8不銹鋼及び炭素鋼の如き熱膨脹係數の異なる金屬が熔接によつて接合される樣なときには斯かる熱處理でも無效である事が實證される.オーステナイト-クロム-ニッケル鋼に應力腐蝕割れを發生せしめ得る腐蝕液は限られた數である.鹽化エチルと水の混合液は應力腐蝕破損を起すのに非常に效果がある.又鹽化第二鐵及び鹽化第二水銀溶液も非常な破壞的效果を與へる.本論文中には應力腐蝕破損の機構が腐蝕疲勞割れと類似することも論及されてゐる.