傾斜地牧野の利用評価と牧養力の推定に関する研究 : VI. 傾斜牧草地における群集構造におよぼす高低差の影響
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概要
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1959年5月と10月の2回にわたつて,兵庫県多紀郡内の3牧草地において,傾斜の高低差と牧草の分布構造との関係について研究した.観察した草地は,前報と同一であつて,ほとんどLadino cloverとOrchard grassの両草種によつて占められているために,両草種について観察した.調査は(20cm)2のquadratで行なつた.quadratの位置は,土壤および収量採集地点と同一である.本稿では,ポリア•エッゲンベルガー型の粗略的判別式であるλ=x+xd/1+dが,草勢によく反応する性質を知つて,本式で求められる直線を草勢直線と名づけ,この直線とx軸とのなす角度によつて草勢を診断した.傾斜草地においては,検定の結果,大略,cloverは低位において,Orchard grassは高位において,それぞれ優占する傾向がみられた.なお草勢直線の性質を研究した結果,次のことがわかつた.1) 本数分布と被度分布とでは,分布型の表示にかなり大きな差がある.草勢直線を使用する場合は,被度を使つたほうが,草勢表示がより強調される.2) 分布型は,草勢直線とx軸とのなす角度に関係する.また相似た異なる2草地を混合して,草地群として評価する場合,その混合草地の被度あるいは本数から得られた草勢直線から,草地群の草勢診断が可能である.3) 前項と逆の場合であつて,2つの異なる分布型を持つ草地を混合して,得られた草勢直線の角度から,おのおのの分布型を推測し得る.しかし被度の分布では,確率変数が0,1,2,…,10に限定されるから,もしある草地では0,1,2などの小さい数値のほうに度数が偏在し,他の草地では,反対に,8,9,10のほうに最大の度数が偏在しているとき,2草地混合の場合は,この草勢直線から2草地の分布型を推測することはむずかしい.この場合は,度数分布表あるいは度数分布図を照合して,推察する必要がある.
- 社団法人 日本畜産学会の論文
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