総合助成試験の課題名からみた茶業研究の動向と問題点
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
昭和37〜52年度に実施した,茶業に関する総合助成試験について,適正な研究課題の大きさ,部門別・研究目標別研究課題数,研究課題と背景との関係を分析し,若干の問題点を指摘するとともに,今後の研究推進についても提言を行った。<BR>1. 初期(昭和37〜43年)め課題名は,きわめて総括的であり,課題の中の細目課題は一般に言う小課題に相当し,広範囲にわたり,しかも研究期間が短かいものが多い。中期(昭和44〜47年)の課題名は具体的な表現をするようになったが,技術体系的で小課題としてはやや大きい。また,この時期には共同研究が大きく取り上げられた。後期(昭和48〜52年)には,具体的で府県の特微を表わした課題が多い。<BR>2. 初期の総括的な課題は中期以後の課題と同列にして分析するには不適当であるので,筆者が細目課題を整理し,小課題に相当する37課題を摘出した。その結果,総課題数は113となり,これについて検討を加えた。<BR>3. 茶園面積の大きい県は,小さい県よりも課題数が多く,栽培・製茶両部門の課題を実施している。これに対して面積が小さい県は課題数が少なく,栽培部門のみを実施している傾向がある。<BR>4. 研究課題から研究目標を推定すると,生産安定と労働生産性向上に属ずる課題が多く,品質向上に属する課題はやや少ない。また労働生産性は初期に,品質向上は後期に課題が集中している。生産安定に属する課題数は年次による差はあるが,全期間をとおして実施されている。<BR>これらのことは,昭和36年の農業基本法に基づく一連の農政と茶の生産状態,動力摘採機や大型製茶機など省力的な機械の出現,さらに需給安定などの背景とおおむね一致している。<BR>5. しかし,課題摘出が適切でない場合には,目標に<BR>対して成果が得られない心配がある。従って,今後は背景から重要研究問題を,問題から重要研究課題を,そしてさらに総合助成課題が摘出されることを期待する。また事前評価はすべての課題に必要であるが,とくに共同研究では,十分に行われなければならないものと考える。