茶園のせん枝による刈り落とし枝葉の分解と養分動態
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概要
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茶園のせん枝作業で刈り落とされ,うね間に堆積した枝葉の圃場における分解と養分動態を解析するため,リターバッグ法により調査した。<BR>1.調査は,やぶきた35年生,栽植密度1.5m×0.3m,樹高90cmの茶園を用い,5月下旬に,深刈り区は株面から深さ30cm,浅刈り区は株面から深さ8cmの位置で刈り落とした。この際の枝葉量は,乾物重で1ヘクタール当り,深刈り区は,葉3.7t,枝7.4t,計11.1t,浅刈り区では,葉3.1t,枝2.3t,計5.4tであった。<BR>2.12ヵ月後の乾物重の残存率は,深刈り区で葉41%,枝80%,浅刈り区では葉42%,枝75%であった。また,養分含有率の変化では,葉,枝ともにカリウムが速やかに減少して行くのに対して,窒素,リン,カルシウム及びマグネシウムでは数ヵ月間は上昇し,その後減少へと転じていた。<BR>3.うね間に刈り落とされた枝葉の養分量は,深刈り区で1ヘクタール当り窒素205kg,リン24kg,カリウム102kg,カルシウム63kg及びマグネシウム15kgであった。また,浅刈り区では1ヘクタール当り窒素173kg,リン14kg,カリウム59kg,カルシウム35kg及びマグネシウム9kgであった。<BR>4.刈り落とされた直後の葉の分解過程を調査したところ,養分残存率の変化は元素の種類によって異なり,カリウムが最も速く減少し,次いで窒素,リンで速く,カルシウム,マグネシウム及びアルミニウムの減少は緩やかであった。<BR>5.刈り落とされた枝葉の分解に伴う養分の消失割合は枝よりも葉で大きく,枝ではカリウムを除くとゆっくりとした速度で養分の減少が進んでいるのに対して,葉は最初の2ヵ月間で急速に分解し,乾物重及び窒素,リン,カリウムはもとの50%以下になり,養分は速やかに土壌に還元されていくものと推定される。
- 日本茶業技術協会の論文