マウス唾液蛋白の生化学的遺伝標識と性差
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概要
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マウスの全唾液蛋白は,ポリアクリルアミドゲルを支持体とした電気泳動法により約20本のバンドに染別され,それをI〜V分画に大別すると,その第IV分画に性差を認める系と,認めない系の2群を見い出すことができる.すなわち易動度の速いバンド(F型)と遅いバンド(S型)を認め,これを仮にMouse salivary Protein-1 system (Msp-1システム)と名付けた.Msp-1システムをマウスの系統別に検索したところ,C3H/He, CBA/N, A/HeおよびAKRなどの4系統の成熟雄はS型を,成熟雌はF型を示し性差を認めた.これらのマウスは幼若期には雌雄いずれもF型を示すが,雄は成長に伴って変化し,5〜6週齢でS型となった.しかし雌は常にF型を保ち変化は認められなかった.しかしBALB/C, C57BL/6, WB/Re, WC/Re, NC, KKおよびDDDなどの7系統は雌雄いずれもF型を示し,性差を認めなかった.またC3H/Heの成熟雄は去勢によってF型を示すようになり,去勢雄ならびに成熟雌はテストステロンを投与するといずれもS型に変化した.C3H/He雄にエトロジェンを投与してもその影響は認められなかった.性差を示さないBALB/cの成熟雌雄はテストステロンを投与しても変異を示さなかった.