豚の雌性生殖道内における精子からの精子被覆抗原の消失
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概要
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雌性生殖道内における精子の受精能獲得の過程を明らかにするために,精子に付着した精漿由来の精子被覆抗原(SCA)の消長を,卵管内における排卵卵子の受精率との関連で検討した.未経産豚には発情前期の終わりにHCG 500iuを投与し,経産豚には離乳翌日にPMS 1000iuさらに56時間後にHCG 500iuをそれぞれ投与して排卵を誘起させた.これらの雌豚は屠殺前3時間,6時間および24時間に交配を行い,屠殺後雌性生殖道から精子および卵子を回収した.回収した精子について間接螢光抗体法でSCAの付着の有無を検討したところ,交配後3時間では16.6%の精子にSCAの消失を認めたに過ぎなかったが,交配後6時間では子宮から回収した精子の91.3%がSCAを消失していた.交配後24時間を経過すると子宮から精子は回収されなかった.一方,子宮卵管接合部から交配後6時間ならびに24時間で回収した精子では,すべてSCAが消失していた.卵管内卵子の受精率は交配後3,6および24時間でそれぞれ5.6%,43.8%および92.0%であった.これらの結果から,SCAの消失は精子の雌性生殖道内滞留時間が長くなるに従って進行し,6時間でほぼ完了することが知られた.