豚副腎皮質の組織学的構造
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
副腎皮質の基礎となる結合組織線維はごく初期(少くとも胎生2か月令以後)から雌雄の区別なく,略々一定した形態をと。即ち被膜から可成り密に線維が内方に入ってz. glomerulosaの細胞群を索に分ける。outer fasciculataでは毛細血管に沿うて極く小量の線維が細胞索に平行して走る。inner fasciculataではやや密度を増し各細胞を線維で纏絡すちようになる。z. reticularisでは非常に線維が密であって幼若期には水平方向,年令が進むにつれz. reticularisの巾は増加し,又やや斜に走るようになり,更に大きな成熟豚では一層増加し斜方向の線維の走る層の内方,髄質に接する部分にのみ再び水平方向の線維が見られる。従ってz. glomerulosa及びz. fasciculataでの線維の分布は可成り初期から一定の型をとり,z. reticularisに於ては年令と共にその巾が増加し,又その分布には多少の修飾が起きることを示す。z. glomerulosa及びz. fasczculataの細胞は他の哺乳類のそれと略々同一所見を呈する。即ちz. glomerulosaにある細胞の細胞質は少く,概してスダン嫌性であり,少数の微細粒状のlipid顆粒を有する。intermediary zoneの区別は余り明瞭でない。outer fasciculataの細胞は強く一様なスダン好性を示し又この層のlipid顆粒は外方から内方へ向って3日月状,半月状,満月状と変化し且つ大ききも増し,又細胞自身も内方に入るにつれて大きくなる。これらのlipid顆粒はBAKERがphospholipids検出の為に用いたAcid hematein染色に陽性であるからphospholipidsを含むと思われる。又z. glomerulosaからz. fasciculata(sudanophilic bandを除く)までの巾は6か月令より3か年令までの豚では比較的一定している。z. reticularisの細胞は生後6か月令で出現し小型の一様にスダン好性を示す細胞よりなる。inner fasciculataはこの間を連絡するようにouter fasciculataとの境界では略々これと同大の細胞で内方に向つて次第に小型となり,又瀰漫性スダン好性を失う(A1型)。6〜9か月令の豚ではinner fasciculataの細胞は内方に向つて小型とならず,この層に続いてz. reticularisには大きいlipid滴を多量に持つ細胞が存在する(A2型)。生後10か月令以後ではinner fasciculataの最内層には小型の瀰漫性のスダン好性を示す小型細胞が少し出現し,又z. reticularisの細胞のlipid滴の髄質寄りのものはcholesterol,中性脂肪を含むようになる(B型)。即ちこの型のz. reticularisの外層の一部はA2型のz. reticularisの細胞のままである。従つてA2及びB型では真のz. reticularisの細胞はない。更に年令の進んだものでは新たなる細胞が髄質との境界のz. reticularisに現われる。この為cholesterol bandは髄質から離れてくる(C型)。C型のz. reticularisの細胞の細胞質は乏しく,外層のものはスダン嫌性であるが内方では再び不規則な形のlipid顆粒を持ち最内方では小型で扁平のスダン好性の細胞よりなる。雄の場合にはこの層は蓍しく狭いからこれら各層の区別は明かでなく,主として最内層にみられる細胞より構成されている。雌では年令の進むに従つてz. reticularisは広くなり遂には全皮質の約1/2を占めるようになるが雄ではかかることはない。雄の去勢による影響は認められなかつた。cholesterol bandは生後10か月令位で出現し,且つ次第に皮質の外方へ移る。成熟雌豚ではこのbandは妊娠初期消失し,末期には再び出現し,又泌乳期で消失すると云う変化を示すから,一次的かご次的かは不明であるが性現象と何らかの関係があると推定きれる。豚副腎皮質の型は年令の進行と共に,A1,A2,B,C型の順に変化し,且つ成熟期に於いては性差がみられるようになる。各層の細胞学的変化を追求した以上の所見から細胞移行説を支持したい。
著者
関連論文
- ニワトリの副腎髄質細胞の分泌顆粒の分泌過程について
- 日本在来鶏の品種分化に関する骨計測学的研究
- 野鶏およびニワトリの頭蓋計測
- ニワトリ副腎のカテコラミン貯蔵細胞のレセルピン投与による変化の電子顕微鏡的研究
- 鶏の比較解剖学的並びに局所解剖学的研究 : LXXVIII. 膵葉の区分および膵管分布について
- ニワトリ食道腺に含まれる複合糖質の組織化学
- 豚副腎皮質の組織学的構造
- 鶏における仙髄副交感神経節前細胞数の不相称
- 鶏における仙髄副交感神経節前細胞の位置
- 家畜•家禽の解剖に関する研究の動向
- 豚副腎の形と重量について
- 201 鶏の比較解剖学的並びに局所解剖学的研究 : XLIII. 鶏および野鴨の脳の外部形態 (第59回日本獣医学会記事)
- 200 鶏の比較解剖学的ならびに局所解剖学的研究 : XLII. 家鴨の頭頸部における筋の起始および停止について : (1)頭部の筋 (第59回日本獣医学会記事)
- 鶏の比較解剖学的並びに局所解剖学的研究 : IV. 鶏の頭頸部における筋の起始および停止について : その1. 頭部の筋
- 鶏の比較解剖学的並びに局所解剖学的研究 : IX. 鶏の後肢筋の起始および停止について