南アフリカ共和国二重済下の農村共同体 : トランスカイ土地保有制度史を題材に
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概要
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南アフリカ共和国旧ホームランドとは, 人種隔離体制下で出稼ぎ労働供給地へと転換されたアフリカ人居留地を指す。政権は労働管理の手段として土地政策を行使し, 農村において共同体的土地保有制度を温存した。その結果, 南ア経済は, 都市経済と農村共同体からなる二重経済構造をとることになった。他方, 共同体原理の押し付けを図った土地行政は, アフリカ人社会に芽生えていた社会偏差を拡大する結果となった。従来の二重経済論は, 旧ホームランド社会を, 商業化契機を逸した農業に依存する一枚岩的な共同体と捉えてきた。これに対し, 土地保有制度史は, 二重経済下における農村アフリカ人社会において, 進取的住民と保守的住民へ社会分化が進行していった史実を示してくれる。本論文では, 二重経済下の農村共同体像を理解する一つの方法として, 土地保有制度史を題材に, 共同体的土地保有の制度的側面とアフリカ人の土地行政への対応を複眼的に捉える分析視座の提示を試みる。さらに, 筆者の調査地の事例から, 非効率的な土地利用の現状を, 二重経済における「2つの世界」, という分析視座から考察する。