「伝統」と文化創造 : 植民地ガーナのアチモタ学校における人格教育
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概要
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本論は, 1927年に植民地ガーナで, アフリカ人のリーダーを育てるために, 植民地政府によって設立されたアチモタ学校の教育哲学とその実践を分析したものである。アチモタの教育は,「ヨーロッパ人の知性を持ち, アフリカ人の心を持つ」指導者の人格を育てることを目指していた。この目的を達成するため, アチモタはアフリカの生徒の社会的, 文化的バックグラウンドに合わせてカリキュラムを開発する一方で, イギリスのエリート校であるパブリック・スクールの人格教育を忠実に再現しようとした。この論文の前半では, アチモタ学校で教えるべき「アフリカの伝統」というものが定義された過程を紐解く。実際「アフリカの伝統」などという単一の固定的なものは存在せず, アチモタのカリキュラム開発は, アフリカ, ヨーロッパ双方の人々を巻き込んだ, まさに「伝統」概念の創造作業であった。欧米の最新のリーダー教育, 特にパブリック・スクールの伝統を忠実に守りつつアフリカの伝統を同時に守ろうとしたアチモタの教育は, 時に矛盾する二つの「伝統」を融合し, 変形させつつ, アチモタで教育を受けた人々の間に, 二つの「伝統」のどちらにも属さない新しい文化を作り出した。
- 日本アフリカ学会の論文