ムクドリの繁殖個体群構成
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概要
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ムクドリの繁殖期は二峰型であり,5月10日を境に第一の峰をもつ繁殖前期と第二の峰をもつ繁殖後期に分けられる。前期の個体群は前年の前期で繁殖した連続前期繁殖個体,初めて調査地で繁殖する前期新移入個体,前年の後期で繁殖した前期移行個体および前年以前の前期あるいは後期で繁殖した前期再移入個体から構成されている。一方,後期繁殖個体群は前期で繁殖した再営巣個体と第2回繁殖個体,前期で繁殖していなかった後期新移入個体,後期再移入個体,後期移行個体および連続後期繁殖個体から構成されている。一般に,二峰型の繁殖期をもつ種では後期個体群は主に再営巣個体と第2回繁殖個体からなるが,ムクドリの場合はこれらの個体は1/3にすぎず,主に前期で繁殖していなかった純後期繁殖個体によって構成されている点が異なっている。前期は後期よりも繁殖成功率が高く,1巣当たりの平均巣立ち雛数も多いことから,繁殖には好適な時期であると考えられる。また,純後期繁殖個体数と前期の托卵率とに正の相関があった。純後期繁殖個体が多い年は前期の托卵率が高い,すなわち前期に余剰個体が多く,これらの余剰個体の一部が後期繁殖個体になっていることを示唆している。純後期繁殖個体の年平均消失率は前期繁殖個体より有意に高かった。純後期繁殖個体が前期移行個体になる割合はわずか1/5にすぎなかった。消失率が高いことと前期移行率が低いことから,純後期繁殖個体には前期移行個体になる定着型と調査地から移出する放浪型がいると考えられる。
- 財団法人 山階鳥類研究所の論文