LRI/BMZ Safe Food Fair Food : サハラ以南アフリカにおける,小規模畜産農家の継続的市場参入確保と同時に目指す動物由来食品衛生の向上のための人材育成
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概要
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発展途上国では,食品由来感染症は公衆衛生上最も大きな問題の一つであり,動物由来感染症はその大きな割合を占める。特にサハラ以南アフリカには貧困に苦しむ国が多く,食品衛生の質は非常に低い。その理由は,生活環境の衛生状態が悪いことに加え,流通される食品のほとんどが政府によって管理された正規の流通経路を経ないことにある。消費者と政策決定者の多くにとっては食品衛生よりも生き延びるための食糧安全が最優先であり,小規模農家がほとんどを占める生産者も,衛生状態を問われず容易に販売できる非正規流通経路に頼っている。このような現状の中でトップダウンの食品衛生向上政策を導入しようとしても,市場参加者の賛同が得られず,小規模農家や市場参加者の生計を奪いさらに貧困を広げることになり,政策は成功しないことが予想される。ドイツBMZの支援によるSafe Food, Fair Food (SFFF)プロジェクトでは,先進国で食品衛生向上を大きく改善させたリスク分析の人材育成を,資源に乏しいサハラ以南アフリカで行っている。食品由来感染症リスク評価と,生産者と市場参加者の間で自主的で達成可能な衛生向上対策の模索のため,リスク分析の適応には参加型手法を組み入れている。SFFFプロジェクトでは,まず参加国の動物由来食品衛生に関わる関係機関による食品衛生状況分析によって問題を把握する。本プロジェクトに必要な技術の研修をドイツの機関(連邦リスク分析研究所(BfR)とベルリン自由大学(FUB))と共同で行う。選ばれた重要問題について大学院生を指名し参加型リスク分析を行うことにより,生産者と市場参加者の継続的市場参入を確保しながらの食品衛生の向上への道筋を示すと同時に参加国のキャパシティー開発を行う。推計学的リスク評価で得られた結果は国レベルでのワークショップで共有し,政策決定に役立ててもらうだけでなく,本方法の理解を深めることによりその継続的利用を促す。参加国はケニヤ,タンザニア,エチオピア,ガーナ,マリ,コートジボワール,モザンビーク,南アフリカ共和国の8カ国であり,計18人の学生が研究に従事している。研究内容は,人と家畜のブルセラ病,牛肉の大腸菌O157とサルモネラ汚染,牛乳中の黄色ブドウ球菌,燻製魚中の多環式芳香族炭化水素(PAH),鶏肉のサルモネラ,国立公園で計画狩猟された野生動物,干し牛肉,伝統的民族儀式における食肉習慣など多岐に渡る。発表では研究内容の一部を紹介する。
著者
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蒔田 浩平
国際家畜研究所(ILRI)
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Grace D.
国際家畜研究所(ILRI)
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Randolph T.F.
国際家畜研究所(ILRI)
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Baker D.
国際家畜研究所(ILRI)
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Staal S.
国際家畜研究所(ILRI)