人工授精におけるドナーの匿名性廃止の法制度化の取り組みと課題 : —オーストラリア・ヴィクトリア州の事例分析を中心に—
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概要
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近年,提供精子による人工授精(DI)によって生まれた子ども(DI子)の出自を知る権利を認めることの必要性が認識され始め,ドナーの匿名性廃止の法制度化を行う国(州)が増加している。本研究では,ドナーからDI子へのアクセス権を認めるユニークな制度を持つオーストラリア・ヴィクトリア州の事例に着目することで,ドナーの匿名性廃止後の社会の取り組みにおける現状,その問題の所在と対応について分析し,DI子の出自を知る権利における課題について考察を行った。ヴィクトリア州政府機関による一次資料や新聞記事を中心とした資料の分析によって,DI子の出自を知る権利の保障はドナーの匿名性廃止の法制度化によって容易に実現できるものではなく,医療側,政府側からDI家族への積極的な支援,そして,DI家族が生殖と性愛の一致や血縁へのとらわれから解放され,男性不妊のタブーを克服することが求められていることを示した。