中国都市部の高齢期の世代間援助に見られる家族戦略 : ——瀋陽市の事例を通して——
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概要
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本稿では,瀋陽市の高齢者とその家族に対する聞き取り調査の中から3つの事例を取り上げ,中国都市部における世代間援助の実態,および親子双方が援助する際に持つ家族戦略を考察した。世代間援助は時代的背景に伴い大きく変化した。現在の高齢者世代は積極的に子世代をさまざまな場面で援助しているにもかかわらず,子世代の援助を期待しないことが語られた。一方,子世代には,伝統的な孝行観が依然として強く影響し,特に親から経済的に援助を受ける子供は親への「恩返し」の気持ちが高まる。非経済的な世代間援助が日常的場面において頻繁に見られ,特に子供からの情緒的援助は高齢者にとって重要な意味を持っている。これらの知見からは,市場経済化後の中国都市社会において,家族は「助け合い」を通して,ますます激しくなる競争社会とリスクに適応する過程で,家族間の絆を深めていき,外部社会の援助が求めにくいときに,「自助戦略」を取ることが判明した。
- 日本家族社会学会の論文