ホルモン関連前立腺癌治療薬の研究開発―17, 20-リアーゼ阻害薬を中心に―
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概要
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現在,前立腺癌の薬物療法の中心はホルモン療法である.性腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体作動薬の徐放性製剤による薬物的去勢が広く用いられている.前立腺癌はこれら去勢療法に著効を示し,その効果は2〜3年程度持続する.しかし,その後,ほとんどの場合で再燃が起こる.この去勢療法抵抗性前立腺癌に対し化学療法薬のドセタキセルが有効であるが,奏功期間が短く,また,強い副作用があるため,去勢療法抵抗性前立腺癌に対する新しい治療法が強く望まれているのが現状である.最近の研究から去勢療法抵抗性前立腺癌においても去勢療法前の前立腺癌と同様にアンドロゲン受容体シグナルが重要な役割を果たしていることが明らかになってきた.去勢抵抗性獲得メカニズムの仮説として,(1)副腎性アンドロゲンによるアンドロゲン受容体活性化,(2)アンドロゲン受容体発現増加によるアンドロゲン受容体感受性亢進,(3)アンドロゲン受容体変異による各種ステロイドホルモンおよびアンドロゲン受容体拮抗薬のアンドロゲン受容体作動薬化,(4)恒常的活性化型のアンドロゲン受容体スプライシングバリアントの出現,(5)アンドロゲン受容体以外の増殖シグナルの利用,などが挙げられる.これらの仮説に基づいて,それぞれ,(1)副腎性アンドロゲン合成阻害薬,(2)高親和性のアンドロゲン受容体拮抗薬,(3)種々の変異型アンドロゲン受容体に対して拮抗活性を示すアンドロゲン受容体拮抗薬,(4)アンドロゲン受容体ダウンレギュレーター,(5)化学療法薬や分子標的薬,などの研究開発が進行中である.特に,副腎性アンドロゲンの合成を阻害する17, 20-リアーゼ阻害薬および高親和性かつ種々の変異型アンドロゲン受容体に対して拮抗活性を示す高活性アンドロゲン受容体拮抗薬は,現在,臨床試験で良好な成績を示し,期待されている.前者の例としてAbiraterone acetate およびTAK-700があり,後者の例としてMDV3100がある.