新規抗てんかん薬レベチラセタム(イーケプラ®錠)の薬理作用と臨床成績
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
レベチラセタムは,ピロリドン誘導体の新規抗てんかん薬である.薬理試験として,てんかんモデルおよび急性けいれんモデルを用いて,レベチラセタムの作用を検討した結果,実施したキンドリングモデル等の全ての部分発作および全般発作を有意に抑制し広範な発作に対する有効性が示された.しかし,既存の抗てんかん薬とは異なり,最大電撃けいれん(MES)等の急性けいれんの抑制作用は認められなかった.また,レベチラセタムの作用機序として,(1)Synaptic Vesicle Protein 2A(SV2A)への結合,(2)N型カルシウム(Ca2+)チャネル阻害,(3)細胞内Ca2+の遊離抑制,(4)GABAおよびグリシン作動性電流に対するアロステリック阻害抑制および(5)神経細胞間の過剰な同期化の抑制を見出したが,特にレベチラセタムが有するSV2Aへの高い親和性は既存の抗てんかん薬にはみられない特徴であった.実際に,レベチラセタムのSV2Aへの親和性と各種てんかんモデルに対する発作抑制作用との間に高い相関が認められたことから,レベチラセタムはSV2Aに結合し神経伝達物質放出を調節し,てんかん発作を抑制すると考えられた.一方,本邦の臨床試験では,第III相試験として既存の抗てんかん薬による治療で十分にコントロールできない部分発作を有するてんかん患者を対象にプラセボ対照二重盲検比較試験を実施し,レベチラセタムの有効性および安全性を確認した.レベチラセタムの代謝はチトクロムP-450の関与を受けず,併用された既存の抗てんかん薬の薬物動態にも影響を及ぼさなかったことから,既存の抗てんかん薬でしばしば問題となる他剤との薬物相互作用のリスクは少ないと考えられる.以上の成績および特徴から,レベチラセタムは本邦において部分発作を呈する難治てんかん患者に対して有用な治療薬になるものと考えられる.