明らかな誘因なく発症した維持透析患者たこつぼ型心筋症の1例
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
症例は,ほぼ安定した維持透析を受けていた,68歳,女性.透析終了後に,自宅で強い動悸を伴う胸痛があり,翌透析開始時には症状はかなり軽減していたが,12誘導心電図を施行されたところ,I,II,III,aVF,V2-V6誘導で陰性T波,V1-2誘導でST上昇を認めた.心エコー検査では心尖部の壁運動の低下が認められた.以上の所見より急性心筋梗塞の可能性も否定できず,緊急入院となった.本症例においては,1か月前ごろより,透析後体重が,適正体重より下回っていたためと思われる透析中の軽度の血圧低下以外は,精神的肉体的には大きなストレスはないと思われ,ほぼ安定した維持透析を施行されていた.入院後施行された心臓カテーテル検査では,冠動脈には所見はなく,左室造影にて心尖部は無収縮で心基部にのみ収縮を認め,たこつぼ心筋症と診断した.入院後胸痛症状はすみやかに消失,バイタルも安定しており,心エコー検査でも心尖部の動きは改善傾向であったため第4病日に退院となった.以後,外来透析を継続中であるが,透析後体重を上げたこともあり,以前みられていた,透析中の血圧低下や,胸痛の再燃もなく,ほぼ安定した状態で推移している.本症の発症機序はいまだ不明であるが,強い精神的ストレスおよび身体的ストレスなどを受けた後に発症した例が多数報告されており,カテコラミン等の交感神経の関与が示唆されている.透析患者の多くは精神的,肉体的に多くのストレスを抱えているといわれており,また,腎不全患者では交感神経系が亢進しているとの報告もある.日常的に多くのストレスを抱える透析患者において,胸痛や心電図の異常を認めたときには,一般に軽微と思われるストレスや明らかな誘因がなくとも,本症が発症しうる可能性を考慮すべきであると考えた.
著者
-
渡邉 出
岐阜中央病院血液浄化センター
-
梶間 敏彦
岐阜中央病院血液浄化センター
-
平野 智久
岐阜中央病院循環器内科
-
羽田野 満明
岐阜中央病院看護部
-
志村 貴之
岐阜中央病院臨床工学課
-
竹山 麗
岐阜大学第2内科
-
渡邉 出
岐阜中央病院救急診療科
関連論文
- 明らかな誘因なく発症した維持透析患者たこつぼ型心筋症の1例
- 4.血液透析患者に対する腹水濾過濃縮再静注法 : Dry Weight変動制で管理した症例と発熱副作用回避に向けた試み(一般演題,第11回日本アフェレシス学会中部地方会抄録)
- FDG-PETが術前診断に有用であった肺小細胞癌虫垂転移による急性虫垂炎の1例
- P-2-172 炎症反応を呈し術後腸腰筋膿瘍をきたした腸間膜GISTの1例(GIST4,一般演題(ポスター),第63回日本消化器外科学会総会)
- P-2-159 肝鎌状間膜裂孔ヘルニアの1例(小腸閉塞3,一般演題(ポスター),第64回日本消化器外科学会総会)
- 明らかな誘因なく発症した維持透析患者たこつぼ型心筋症の1例
- P-1-727 当院における緩和医療の現状と展望(緩和医療1,一般演題(ポスター),第62回日本消化器外科学会定期学術総会)
- P-1-146 十二指腸原発GISTの2例(胃 GIST3,一般演題(ポスター),第62回日本消化器外科学会定期学術総会)
- 胆嚢カルチノイドの1例
- 1066 Sister Mary Joseph結節を呈した十二指腸癌の1例(後腹膜・腹膜3,一般演題,第61回日本消化器外科学会定期学術総会)
- 門脈ガス血症と腸管嚢腫様気腫症を呈した非閉塞性腸管梗塞症の1例
- PPS-2-280 ガス壊疽菌感染症と鑑別を要した非閉塞性腸管梗塞症の1例(小腸3)
- PPS-2-273 直腸粘膜下腫瘍手術後に小腸の広範囲に発症した非閉塞性腸管梗塞症の1例(小腸3)
- 1.胃軸捻転症を伴い全胃と横行結腸が脱出した傍食道型裂孔ヘルニアの1例(第200回岐阜外科集談会)
- 1.巨大卵巣嚢腫の2例(第198回岐阜外科集談会)
- 胆嚢原発カルチノイドの1例
- 胃軸捻転症を伴い全胃と横行結腸が脱出した傍食道型裂孔ヘルニアの1例
- 12.大腸脂肪腫の1例(第191回岐阜外科集談会)
- 肝動注リザーバー留置が原因と考えられる総肝動脈瘤の一治験例(第195回 岐阜外科集談会)
- 1.緩和ケア病棟における持続皮下注射法による疼痛コントロールについて(第196回岐阜外科集談会)
- 稀な嵌頓形式を示した腸間膜裂孔ヘルニアの1例
- 3.末梢動脈疾患(PAD)を合併した維持透析患者に対する血液透析とLDL-Apheresisの多治療同時施行 : 装置面からみた安全性に関する検討(ミニシンポジウムII : 末梢動脈疾患患者の予後改善をめざして,日本アフェレシス学会第10回中部地方会抄録)