中枢神経系障害を合併した抗糸球体基底膜抗体型腎炎の1例
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概要
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症例は47歳,男性.2008年8月頃より全身浮腫と呼吸苦が出現したため前医受診,Cr 3.33 mg/dLと腎機能障害がみられ9月当院紹介入院となった.高度蛋白尿と血尿がみられ,さらに腎機能の悪化がみられたため,ネフローゼ症候群を伴う急速進行性腎炎症候群と診断し腎生検を行った.25個の糸球体のうち23個で細胞性ないし線維細胞性半月体形成がみられ,IgGが係蹄壁へ線状に沈着していた.MPO-ANCA,PR3-ANCAは陰性だったが抗GBM抗体が57 EUと陽性であり,抗糸球体基底膜(glomerular basement membrane:GBM)抗体型腎炎と診断した.入院時よりのステロイド療法に加え第15病日より血漿交換を開始したが,第17病日に突然の全身痙攣発作が出現しその後意識障害が続いた.頭部MRIにて両側側頭葉から後頭葉,脳幹,視床,尾状核,両側小脳半球を中心にT1強調画像で低信号,T2強調画像・フレア像で高信号を示す病変が多発していた.原疾患が関与した脳症と考えられ,抗痙攣薬を投与しつつ,血漿交換,ステロイドパルス,シクロフォスファミドパルスを行った.抗GBM抗体が陰性化した第24病日頃から痙攣発作や意識障害はみられなくなり,退院前の頭部MRIでは多発病変はほぼ消失していた.腎機能は回復せず維持透析となったが,その後抗痙攣薬なしで痙攣はみられていない.本例はその画像や臨床経過からreversible posterior leukoencephalopathy syndrome(RPLS)に相当すると考えられた.ただし,ANCA陰性のGoodpasture症候群で中枢神経系障害を呈した例が稀ながら報告されており,それらは全て抗GBM抗体に関連した中枢神経系血管炎とされている.従って本例においても後者である可能性は否定できなかった.いずれにしても本例はANCA陰性の抗GBM抗体型腎炎において中枢神経系障害を合併した稀な報告例である.
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