「体細胞クローン技術の取り扱いと利用方向」のテーマ設定趣旨と主要論点
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概要
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体細胞クローン牛由来畜産物の安全性確認は,全国畜産場所長会の「畜産技術開発推進に関する提案」や地域の畜産推進会議の要望事項として,ここ数年来,独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構畜産草地研究所に寄せられてきた重要な要望事項のひとつであった.畜産草地研究所では,全国の関係機関の協力を得,体細胞クローン牛およびその後代牛の健全性や生産物性状の調査を進め,2008(平成20)年3月,「体細胞クローン牛・後代牛の健全性ならびに生産物性状に関する国内調査報告書」を取りまとめるなど,その要望に応えるよう務めてきた.食品安全委員会は,この国内調査報告書をはじめとした国内外の参考資料に基づく慎重な審査ならびにリスクコミュニケーションやパブリックコメントを実施し,新開発食品評価書「体細胞クローン技術を用いて産出された牛および豚ならびにそれらの後代に由来する食品」を公表した(2009(平成21)年6月25日).これを受けた農林水産省の通達(同年8月26日)の内容は,実質的に1999(平成11)年11月に出された体細胞クローン牛の出荷自粛要請の継続であった.このような情勢を受け,今回の問題別研究会では,「体細胞クローン技術の取り扱いと利用方向」というテーマを設定し,体細胞クローン牛豚およびその後代に関するリスク評価の経緯やその結果ならびにリスク管理機関(厚生労働省と農林水産省)の方針や考え方を担当官から参加者にわかりやすく説明していただくとともに,参加者の質問にも答えてもらうことにした.あわせて,現在の農林水産省の方針を踏まえた体細胞クローン技術の利用方向として,「クローン検定」と「医学・医療への利用」に関する研究について,参加者の認識を深めるため,関係する理論や実践に詳しい専門家より最新の研究情報を提供していただくことにした.担当官の説明に対し,参加者からは,「食品安全委員会の審査によって,体細胞クローン牛豚の安全性が確認されたにもかかわらす,農林水産省は,なぜ,これらの動物の規制を続けるのか」という声があがった.農林水産省の担当官からは,規制する根拠として,「低い生産効率など,商業生産に見合わない技術段階」と「国民理解の醸成不足」が提示された.これに対して,参加者からは,「どこまで生産効率を高めたら規制を解除できるのか,その基準を教えて欲しい(研究者)」,「消費者は皆よく知っている.規制を続けることがサイレント・マジョリティの声ではない(消費者)」などといった質問や意見がだされた.研究会で提起された論点の詳細については,「体細胞クローン家畜の生産効率向上へ向けた将来展望(12月15日)」の分もあわせて,「畜産草地研究所研究資料(10号 ; 予定)」に掲載し,今後の議論の参考に資したいと考えている.最後に,年末のご多忙な時期にもかかわらず,研究会の講師を務め,また,原稿の取りまとめにもご協力いただいた諸先生に感謝いたします.