血縁なき親子関係をつくるネットワーク―NPO法人「環の会」の事例研究―
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概要
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本研究は,不妊のために子どもを産むことを断念した夫婦が,血のつながらない子どもと養子縁組を通して親子関係を結んでいくプロセスにおいて,養子縁組を支援するNPOが果たす役割を検討しようとするものである。具体的には,新しい養子縁組のあり方を模索しつつ,育て親を開拓する活動を展開しているNPO法人「環の会」でのフィールド研究に基づき,夫婦が養子を迎えるまでのプロセスや,養子に関する啓発活動等の一連の活動内容とその特徴を明らかにした。その結果,産みの親の存在を積極的に組み入れ,かつ,養子を迎えた後も育て親が会の活動を支えることにより,従来の養子縁組が持つ否定的なイメージが打破されつつあることが見出された。また,育て親希望者を対象とした「育て親研修」が,まだ見ぬ養子とともに新しい人生を歩んでいくために必要な先験性を構成する場であると同時に,その先験性は,子どもを迎えた後も,「環の会」と継続的にかかわるシステムに組み込まれることによって,維持・強化されていることを考察した。