フィールドと調査者の共振―地域における日本語支援の現場を例にして―
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概要
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本稿では,「共振」という概念を用い,フィールドワークが何を意味するのかということを探究する。ここでの「共振」とは,調査者とフィールドとの間に成立していると観察される相互関係を指す。それは必ずしも同調ではなく,むしろ多層・多面的に共同構築される現実の政治的な現れ方であり,葛藤・軋轢を経て相互の変容をもたらしたり,あるいはそれらが背景となり現実をつくったりする。 本稿ではこの概念を利用し,地域の日本語支援現場における筆者自身の体験に基づきながら,(a)フィールドワークの再定義,(b)フィールドワークの過程における自身の変容,(c)フィールドエントリーを通じて見えてきた種々の境界,さらに,(d)フィールドにおける行為者のポジションとその変化に伴う「共振」,について議論する。その上で,フィールドワークというのは集合的な学習経験であり,そのプロセスの中で学習を阻む特定の問題を協働で可視化しているのだということを,事例報告を交えながら示す。