シナカルセト塩酸塩の上部消化管合併症の機序
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概要
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二次性副甲状腺機能亢進症治療薬シナカルセト塩酸塩(以下シナカルセト)の有害事象として上部消化管症状が頻繁に認められる.これは消化管に存在するカルシウム受容体(以下CaSR)の影響が考えられる.上部消化管機能を胃酸分泌能(胃内pH・血中ガストリン濃度・血中ペプシノーゲン濃度)と胃排出能(アセトアミノフェン法)にて評価した.シナカルセト使用後に血中ガストリン濃度の上昇はみられたが胃酸分泌に明らかな変化はみられなかった.シナカルセト非使用時とくらべ使用時には胃排出能の遅延が認められた.シナカルセトによる胃排出能抑制の強い症例に上部消化管症状がよくみられた.シナカルセトを服用することで消化管に存在するCaSRに擬似的なCa2+負荷が加わり,アセチルコリン遊離が抑制され副交感神経系の抑制による症状が起こることが示唆された.この上部消化管症状に対する対策としては,胃の内容物ができるだけ少ない時間帯や胃排出能が亢進している透析後にシナカルセトを服用し,胃排出能を促進するような健胃消化剤・アセチルコリン作動薬・プロスタグランディン製剤などを使用することが有効であった.制酸剤の効果は定かでなかったが,シナカルセトを使用する前に上部消化管内視鏡を行い,胃疾患・胃内酸状況・胃粘膜状態・胃の運動機能を把握することが望ましい.これらの工夫によってシナカルセト服用のコンプライアンスは向上し,今後の二次性副甲状腺機能亢進症の治療に有用になることが期待された.
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