維持透析患者における抗百日咳抗体の横断的検討
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概要
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【目的】百日咳感染症はかつて知られていたような小児のみの疾患ではなく,成人発症も稀ではないことが最近明らかになってきた.透析患者の免疫能は低下しており,特定の患者が閉鎖空間で治療を受ける血液透析では百日咳のような流行性・感染性疾患に充分に留意する必要がある.しかし,透析患者における抗百日咳抗体のサーベイランス報告はない.そこでわれわれは,当院維持透析の患者を対象に抗百日咳抗体の横断的調査を行った.【対象と方法】当院腎センターにて外来維持透析中の血液透析(以下HD)109例(男性56例,女性53例,年齢63.9±11.4歳),腹膜透析(以下PD)32例(男性20例,女性12例,年齢65.3±9.9歳)全例を対象として百日咳抗体(細菌凝集反応)である東浜株と山口株を測定した.東浜株抗体価,山口株抗体価ともに10倍以上を陽性とした.ワクチンの普及した1958年以降に出生した者をワクチン接種群とした.【結果】141例のうち,63例が抗体価陰性であり,78例が東浜株あるいは山口株のいずれかが10倍以上の力価を示した.HD,PDの両群において,男女比,年齢に有意差を認めなかった.百日咳抗体価の上昇は,東浜株・山口株ともに透析方法や,過去のワクチン接種の有無との関連性はないが,血液透析位置(ベッド)との関連性が示唆された.【考察】HDは閉鎖空間で行われるが,百日咳抗体価にはPDと有意差を認めなかった.またワクチン接種の有無は百日咳抗体価に寄与しておらず,シングル血清での百日咳抗体価のみでは獲得免疫か感染か判断不能である.現行の基準では治療に即した百日咳の早期診断はほぼ不可能であり,その感染対策には一次予防が肝要である.
著者
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