トカラ列島における皆既日食で観察された鳥類の音声行動の変化
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概要
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2009年7月22日に起こった皆既日食の際に,トカラ列島中之島における鳥類の音声行動の変化を調査した.森林内の3地点にデジタル録音装置を設置し,皆既となる6分間とその前後各1時間の2時間6分間の録音を行ない,1分あたりのさえずりまたは地鳴きの回数を種ごとに記録した.また,日食の前日および翌日の同じ時間帯における録音記録(各2地点)と,日没および日出の時間帯における録音記録(各1地点)との比較を行なった.鳴き声や記録された種は17種で,昼行性の鳥類のさえずりや地鳴きなどの音声行動は,調査地点や天候による記録頻度の変動はあるものの日中は継続的に観察され(平均16.4回/分),2分以上にわたって途切れることはなかった.しかし,皆既となる時間帯を含む平均7分49秒間には昼行性の種の鳴き声が全く記録されず,1地点では夜行性のリュウキュウコノハズクが記録された.このような現象は皆既日食にともなう明るさの変化の影響による可能性が高いと推測された.皆既前後の行動と日出・日没時の行動とでは類似点はあるものの異なる部分も多く,日出前後に見られる明るさの変化につれて優占して鳴く種が交代する現象や,日没時刻の約10分前のまだ明るいうちに昼行性の小鳥類の鳴き声が希になってフクロウ類が記録されるようになる現象などは皆既日食前後には観察できなかった.
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