当院における高齢出産の検討
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概要
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近年,女性の社会進出に伴う晩婚化や生殖補助医療技術の進歩により高齢出産が増加傾向にある.当院でも過去2年間の高齢出産の割合は27.3%であった.高齢出産においては分娩所要時間の延長,分娩時出血量の増加,帝王切開や吸引分娩の増加,児のApgar score低下等のリスクが高くなるという報告があり,分娩管理に慎重を要することが求められる.今回われわれは2006年1月から2007年12月までの2年間の足立病院での分娩2876件のうち,分娩前は特別に内科的管理を必要とせず,前置胎盤を認めない36週以降の単胎出生2779例を対象として,分娩様式(帝王切開,吸引分娩,経腟分娩),分娩所要時間,経腟分娩時出血量,児の出生時体重,児の短期予後,母体合併症(妊娠高血圧症候群,常位胎盤早期剥離)の項目における加齢による影響について統計学的検討を行った.35歳以上の高齢産婦は35歳未満の産婦に比し,初産婦において帝王切開率の上昇と妊娠高血圧症候群(PIH)の発症率が有意に上昇したが,吸引分娩率,緊急帝王切開率,経腟分娩所要時間,経腟分娩時の出血量,児の短期予後の項目に関しては有意差を認めなかった.高齢群の中でIVF後に妊娠したIVF群と非IVFの対照群とを,分娩様式,児の短期予後,母体合併症について比較したところ,IVF群で初産婦の帝王切開率が有意に高かったが,吸引分娩率,児の短期予後,母体合併症(常位胎盤早期剥離,PIH)については有意差を認めなかった.35歳未満群においてもIVF後の妊娠で初産婦の帝王切開率が有意に高い結果であった.当院では,体外受精(IVF-ET,ICSI)を含めた不妊治療後の妊娠が多く,高齢産婦の割合が高いことが,結果的に帝王切開率を高くしていると考えられる.晩婚化や生殖補助医療の導入により高齢出産の増加が今後も予想される.従来いわれているように,高齢妊娠をハイリスクとして慎重に対応していく必要がある.内科的合併症や前置胎盤のない36週以降の単胎の産婦においては,加齢により帝王切開率の上昇やPIHの増加が認められるものの,分娩所要時間,経腟分娩時出血量,児の出生時体重・短期予後に影響は認めなかった.高齢産婦への個別の情報提供を考えるとき考慮される事項と考える.〔産婦の進歩61(3):217-223,2009(平成21年8月)〕
著者
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中山 貴弘
足立病院産婦人科
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畑山 博
足立病院産婦人科
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山出 一郎
足立病院
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眞田 佐知子
足立病院
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眞田 佐知子
足立病院産婦人科
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山出 一郎
足立病院産婦人科
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浅野 雅美
足立病院産婦人科
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戸城 えりこ
足立病院産婦人科
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須戸 龍男
足立病院産婦人科
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矢野 樹理
足立病院産婦人科
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