マイクロリアクター内の物質移動計測に関する研究
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概要
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ガラス製Y字型マイクロチャネルを用いて,酢酸−メタノールをモデル系として,それぞれを別々の入口から導入し,2流体が合流した混合部での物質移動を顕微レーザーラマン分光計により計測する実験を行った.まず,はじめに各物質の定量化実験を行い,濃度とラマンスペクトルの強度には比例関係があり,各物質のラマンスペクトル強度からその濃度を求められることを明らかにした.次に,チャネル幅wと深さdの比として定義されるアスペクト比(w/d)が3.2であるチャネルをX–Y–Zステージ上にのせ,ステージを動かしながら,ラマンスペクトルを測定することでチャネル内の濃度分布を観測した.異なった3種類の流速において,濃度分布の観測値と計算値が良好に一致したことから,顕微レーザーラマン分光計を用いた物質移動計測法とCFD(Computational Fluid Dynamics)解析法の両者の信頼性を相互に確認した.次に,CFD解析を用いて,アスペクト比w/dが異なる3数種のマイクロチャネルを取り上げ,チャネル下流域における酢酸とメタノールの界面の位置を調べた.その結果,アスペクト比w/dが1のチャネルでは,酢酸とメタノールの比重の差異から,重力の影響を受けて比重の大きい酢酸がメタノールの下部に潜り込む効果により,2液の界面は3次元的に斜めとなった.一方,アスペクト比が1と比べて大きい3.2であるチャネル,また小さい0.31であるチャネルでは,比重の差異による潜り込みの程度が穏やかであり,界面は垂直に近くなることがわかった.これより,1より離れたアスペクト比を持つチャネルが,潜り込みが抑えられ,深さ方向に対する濃度分布が少ない理由より,2次元濃度分布計測に適していることがわかった.