医療用医薬品の標的分子の同定と今後の展望
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概要
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ヒトゲノムプロジェクト完了に伴う遺伝子情報の増大により,新薬開発の方向性およびプロセスは大きく様変わりしてきている.このような状況の中,遺伝子情報からもたらされる多くの候補の中から,いかに迅速に“創薬ターゲット”を同定することができるか否かが創薬での大きな課題となってきている.そのため,創薬ターゲットの妥当性の薬理評価に重要な,いわゆる“ツール化合物”の同定が重要な因子となって来るが,市場の薬剤の30%を占めるGタンパク質結合型受容体(GPCR)をターゲットとする分野では,新しいスクリーニング技術などの開発により,短期間でのリード化合物の同定が可能となってきている.一方,これまでは困難とされていた高分子タンパク質相互作用を直接阻害する薬剤の同定・開発も可能となり,従来の“創薬ターゲット”からも広がりを見せている.更に,既存の生物製剤に加えて受容体をターゲットとした抗体や新たな薬剤送達システムを用いたペプチド製剤の開発,およびRNAi技術を用いて遺伝子発現を直接制御するような新しいタイプの薬剤も進められている.本稿では,最近の創薬ターゲットの同定に関する動向を,GPCRターゲットに関する情報を例に紹介する.
- 社団法人 日本薬理学会の論文