Aβ1-40およびAβ1-42による細胞死とその抑制遺伝子·タンパク
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概要
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アミロイドβタンパク(Aβ)はアルツハイマー病(AD)の病理学的変化あるいは神経細胞死に関与していると考えられるが,その分子機序は不明である.そこで,Aβ1-40およびAβ1-42による細胞死誘導機序ならびにその抑制遺伝子の探索を行った.Aβ1-40によるSH-SY5Y細胞での細胞死ではタウとJNKのリン酸化が促進され,IGF-1によって抑制された.Aβ1-40の細胞死を抑制する遺伝子·タンパク質をヒト胎児脳cDNAライブラリーを用いて探索した.その結果,遺伝子BF5-1を見出した.BF5-1のC末端25個のアミノ酸配列はチトクロムCオキシダーゼサブユニットVIIb(COX-VIIb)のそれと同じであった.COX-VIIbの発現はAβ1-40の細胞死を促進した.またCOX-VIIbは正常群に比べAD脳で強く発現していることから,COX-VIIbはBF5-1に対してドミナントネガティブに作用している可能性が示唆される.一方,Aβ1-42による細胞死ではL-3-phosphoserine phosphatase(LPP)の発現の亢進が認められた.この発現はIL-11によって抑制され,細胞死も完全に抑制された.また,glutamateによる細胞死はD-serineの添加によって増強された.このことからAβ1-42による細胞死にNMDA受容体の過剰活性化の関与の可能性が示唆される.Aβ1-42による細胞死で発現が亢進される遺伝子としてp18AβrPを見いだした.この遺伝子発現はPC12細胞において,NGFによる分化誘導に抗して細胞死を促進した.この細胞死を抑制する遺伝子としてp60TRPを見いだした.p60TRPはADの海馬および頭頂葉皮質で発現が著明に低下しており,AD脳の細胞死に関与している可能性が考えられる.これらAβによる細胞死の抑制遺伝子·タンパク質の機能についてさらに詳細な検討が必要であるが,それらはADの解析や進行を抑制する治療薬の開発に有用と考えられる.
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