全合成アントラサイクリン系抗癌薬塩酸アムルビシン(カルセド^【○!R】)
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概要
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アムルビシンは住友製薬により全合成された新しいアントラサイクリン系の抗癌薬であり,2002年4月に非小細胞肺癌と小細胞肺癌を適応症として製造承認を得た.ドキソルビシンなど現在市販されているアントラサイクリン系薬剤は全て発酵品あるいは発酵品からの半合成品であるのに対し,アムルビシンは化学的に全合成された化合物である.9位に水酸基の代わりにアミノ基を有し,アミノ糖の代わりにより簡単な糖部分を有するという,発酵品あるいは発酵品からの半合成品にはない化学構造上の特徴を有している.非臨床試験では,アムルビシンはヌードマウス皮下に移植したヒト腫瘍細胞株に対しドキソルビシンより強い抗腫瘍効果を示した.このマウスモデルにて薬剤組織分布を調べたところ,in vitroにてアムルビシンの約5〜200倍の細胞増殖抑制活性を示す活性代謝物アムルビシノール(13位ケトン還元体)が正常組織に比べ腫瘍組織に多く分布していた.アムルビシンは組織分布の上でドキソルビシンに比べより腫瘍選択性の高い薬剤であると考えられ,また,既存のアントラサイクリン系薬剤と異なり,その抗腫瘍効果の発現に活性代謝物アムルビシノールが重要な役割を果たすと考えられた.アムルビシンはトポイソメラーゼIIを介したクリーバブルコンプレックスの安定化により抗腫瘍効果を示し,強いインターカレーション作用により抗腫瘍効果を示すドキソルビシンとは作用機序が異なると推察された.臨床試験では,未治療の進展型小細胞肺癌に対し高い奏効率(76%)を示した.未治療の非小細胞肺癌に対する奏効率は23%であった.主な副作用は骨髄機能抑制で,特にグレード3以上の好中球減少の発現率は77%であった.現在,悪性リンパ腫に対する後期第II相試験と未治療の進展型小細胞肺癌に対するシスプラチンとの併用による第II相試験が進行中である.
- 2003-08-01