食によるがん予防を目指して
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概要
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食によるがん予防へのアプローチとして,簡便な in vitro 試験にて 500 種にも余るアジア産植物性食素材(野菜や果物)の発がん予防スクリーニング試験を実施し,また,50 余りの有望な食因子の解明を行ってきた.スクリーニング試験では,(亜)熱帯産食材の有効性や非栄養的摂取食材の重要性が示された.単離した in vitro 活性成分のなかで,特に興味深かったショウガ科およびミカン科植物由来の 4 種(それぞれ,ACA と ZER,および AUR と NOB)につき,種々の組織・臓器における発がん動物モデル実験を行い,それぞれの予防特性を明らかにした.特に,ACA や AUR では,実施した多くの系で有効との評価ができた.また,4 種の作用機序についても検討し,炎症関連細胞に由来するスーパーオキシドや NO の産生阻害とともに,それに端を発する COX-2 など各種炎症関連因子の抑制作用が,共通して,確認できた.これらの事実は,化学発がんにおける炎症の重要性を示唆する一方で,食素材中に存在する多彩な抗炎症性因子によってがんの予防が期待できることを示唆している.以上をベースに,食によるがん予防の学術的現状を筆者なりに紹介するとともに,その展望についても触れてみる.