鷄に於ける無尾の新遺傳樣式
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概要
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(1) 著者は1930年及1932年に札幌の養鷄場及附屬第一農場に於て白色レグホン種に屬する無尾鷄5羽 (♂ 2, ♀ 3) を得た。實驗後其骨格を檢したるに synsacrum の最後の2椎骨, 5個の尾椎骨及 pygostyl を全々缺除する完全な無尾鷄であつた。(2) Dunn (25, 26) その他の從來の研究によれば, 完全なる形の無尾鷄には2種の型が存在する。その (i) は胎兒の發育過程中に異常温度とか振動等により畸形的に臀部の骨を失ふに至つた遇發的無尾鷄と呼ばるゝもので, これは遺傳的でない。その (ii) は遺傳的無尾鷄で, 無尾はメンデル式單因子優性遺傳をなすといふ。(3) 著者の得た5羽の無尾鷄を用ひて行つた交配實驗の結果は次の通りである。(i) 無尾鷄×正常有尾鷄の F1 は凡て外觀正常なる有尾である (第2表)。(ii) F2 に於ては有尾に對する無尾の比が 3:1 の分離を示した (第3表)。(iii) FR1 に於ては有尾對無尾は 1:1 の比に分離した (第4表)。(4) 以上の結果より, 本研究に於ける無尾は從來の樣式と異り, メンデル式單因子劣性として遺傳をすると決論することに疑問はない。此無尾の劣性遺傳子記號を r とし, 對立する有尾の優性遺傳子を R とおくことにした。此研究で親として使つた5羽の無尾鷄は r に關してホモ接合體 (rr) である。