カイコの多星紋の発現度に対する胚期保護温度の影響
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概要
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カイコの第8環節の亜背点にある星紋を, その前後の環節に重複して発現する多星紋の5系統を用い, それらの発現度に対する胚期の保護温度の影響を調べるとともに, その影響時期を究明し, 低温および35°Cの作用機構について考察を行なった.1. 多星紋の発現度は胚期における保護温度の影響を受け, 15°C催青で発現度の高くなるものと, 逆に低くなるものとがあるが, このような差異は多星紋の発現にあづかる遺伝子が異なることに起因し, 前者をms-i, 後者をms-dと仮称した.2. 両多星紋の温度影響時期はともに胚子反転の初期に当り, 腹部環節における班紋原基の分化形成が決定する時期である.3. 15°Cの低温における温度効果の差異は遺伝子の作用時期が両遺伝子により異なることに起因し, ms-i遺伝子は反転期頃に, ms-d はそれ以前の時期に作用するものと考えられる.4. 両多星紋はともに温度影響時期における35°Cの1日間処理により発現度が高くなったが, これは発現度を調節する抑圧遺伝子の作用が35°C保護により不活化されたことによるものと考えられる.
- 日本遺伝学会の論文