カイコの成熟卵内における精子の低温に対する受精能力, 特にヘテロシスについての一考察
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概要
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1. カイコの成熟卵内の精子の受精力には, 2.5°C と 5°C の間に判然たる臨界点があることを見出した. そしてこの 2.5°C への冷蔵によつて種々な受精現象を観察した.2. 2.5°C に5日以上成熟卵を冷蔵すると精子は受精能力を消失するが, 5°C の冷蔵では受精が正常に行われる.3. 2.5°C の冷蔵における雑種の成熟卵内の精子は純系に近い卵細胞内の精子よりも受精率が高くまた雑種の形となつている卵細胞質内の精子もまた純系の卵細胞質内の精子よりも受精率が高い.4. 同品種間の交配よりも異品種間の交配における卵細胞質内の精子の方が受精率が高い. これらの事実は, 精子が受精作用に働く場として卵細胞質の役割は軽視できないことを示す. 雑種のヘテロシスの原理として梅谷が説いた異系統の卵細胞の好影響があるとの説を裏書きするものである.5. 卵細胞は精子が示したような 2.5°C 冷蔵の受精力に対する臨界点は見出されなかつたが, 一般に卵子の 2.5°C への冷蔵抵抗力は強く, 精子が健全である限り受精は正常に行なわれる.
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