MTK-肉腫 II に対する2, 5-bis-ethylenimino-hydroquinone の細胞学的影響
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概要
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シロネズミ腹水腫瘍, MTK-に肉腫 II に対する2, 5-bis-ethylenimino-hydroquinone (HE)の影響について細胞学的に観察した。HE投与量は動物の体重1kgにつき0.3〜0.6mg とし, 腫瘍を移殖した動物の腹腔内に1回注射を行なった。この実験における投与量の範囲内では, 被注射動物にみるべき害作用がなく, また腹腔内にある正常細胞にも顕著な作用は認められなかった。実験例数21中の2例を除き, すべての実験動物において腫瘍細胞は消失し, 治癒率は91%におよんだ。投与後0.5時間にしてすでに静止期の腫瘍細胞に変性が顕著に観察され, 8時間後にはほとんどの静止腫瘍細胞が視野から消失する。分裂期の細胞も次第に消失し, しかも極度の分裂異常が現われた。静止期の細胞に対するHEの作用として著しいものは, 核質における変化, すなわち仁の膨化, 変形, 核質の染色性異常である。また, 細胞質も大小の空胞形成, 染色性の不均等化等の異常を現わす。これらの変性に伴い, 細胞の直径が次第に増大し, 2〜3倍に達し, それらは崩壊し消滅する。この際, 小形の残存細胞の存在は認められない。これはHEの処理における注目すべき現象である。分裂期の細胞への影響は投与時における分裂期の細胞に直接作用して染色体の異常を生じ崩壊させる。また投与始めて分裂に入る細胞も同様に染色体の異常をきたし崩壊する。染色体の異常としては, 強烈な粘着, 前期における膨潤や塊状, 中期における切断, 転座, 粘着, 凝縮や散乱, 後期における染色体橋形成, 遅滞, 放出や粘着, 終期の不等分配などがみられた。要するにHEの作用は主として腫瘍細胞の核質の変性, 続いて細胞質の変性, 分裂期の染色体の異常をきたし, ついには腫瘍細胞の急激な崩壊を招き, 腫瘍の高い治癒率を示す。
- 日本遺伝学会の論文
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